2025年の建築基準法改正で省エネが義務化され、建築士は省エネ性能向上のための情報提供や適合性審査を行います。住宅は断熱性能等級4以上を満たす必要があり、高断熱住宅は冷暖房効率、遮音性、結露防止、換気効率向上により省エネに貢献します。
目次
2025年に省エネが義務化される
日本のエネルギー消費の約3割を占める建築物分野で、2050年カーボンニュートラルを目指し、2030年までに温室効果ガスを2013年比で46%削減します。
◇建築物分野は日本のエネルギー消費の約3割を占める
菅元総理は、2020年10月の所信表明演説で、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを意味します。
この宣言において、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減するという新たな目標が掲げられました。この目標は、政府が2013年に設定した26%削減という目標から大幅に引き上げたものです。
日本のエネルギー消費の約3割を占める建築物分野においては、省エネ対策の加速が必要とされており、建設業界全体で取り組むべき課題とされています。この取り組みが、2025年の建築基準法改正と省エネの義務化へとつながっています。
◇省エネの義務化で変わること
省エネの義務化によって、以下の二つの変化が生じます。
まず、建築士の役割が変化します。省エネの義務化後、建築士は建築物の省エネ性能を向上させるため、施主に対して省エネ機能の向上に関する情報を提供しなければなりません。
また、省エネ適合性審査に必要な計画書や計算書を作成し、完了検査時には適合検査を受ける必要があります。これにより、建築士は建物の省エネ性能を計算し、品質を保証できるように設計と監理を行わなければならなくなります。
次に、2025年までに適合しなければならない省エネ基準についてです。住宅の「省エネ基準」は、外皮(躯体や開口部)の断熱性能を示す「断熱性能等級」と、消費される一次エネルギー量を示す「一次エネルギー消費量等級」の二つの要素で評価されます。
2025年以降、すべての住宅は断熱性能等級4および一次エネルギー消費量等級4以上を満たすことが求められるようになります。2022年3月まで最高等級だった断熱性能等級4は、実質的に最低等級となり、それ未満の住宅は建築できなくなります。
無機質系断熱材の特徴
無機質系断熱材は、大きくグラスウールとロックウールの2種類に分けられます。ガラスを原料とするグラスウールは、機能、コスト、環境面すべてに優れ、玄武岩や天然岩石を原料とするロックウールは、耐火性と防音性が高いのが特徴です。
◇グラスウール
ガラスを原料とした綿状の断熱材であるグラスウールは、建築現場や家庭内から出る資源ゴミをリサイクルしたガラスを多く使用しており、環境保護やゴミの減量といった環境への配慮がされています。
グラスウールは、絡み合った繊維に多くの空気を含むことで断熱性能を高めており、繊維が細かいほど断熱性に優れています。また、ガラス素材のためシロアリや火災に強く、防音性にも優れているのが特徴です。
この特性により、住宅だけでなく、ビルの空調ダクトや排水管の保温・保冷にも使用され、音楽ホールやスタジオでも採用されています。グラスウールは機能、コスト、環境面でのメリットが高いため、繊維系断熱材の中で最も需要が高い断熱材です。
◇ロックウール
玄武岩や天然岩石を原料にして製造される繊維状の断熱材は、高温の炉で溶融した人造鉱物繊維で、ボード状やフェルト状などさまざまな形に成形が可能です。この材料は高温で処理されているため、耐火性に優れています。
多少重みがありますが、グラスウール同様に防音効果もあり、不燃材として空港などの重厚な場所で採用されています。採石場や石造りの建物が多いヨーロッパでは、1880年代から広く使用されており、日本でも昭和初期に工業化されました。
木質繊維系断熱材の特徴
よく知られている木質繊維系断熱材は、セルロースナノファイバーとウッドファイバーの2種類です。セルロースファイバーはリサイクルされた新聞紙などから作られ、ウッドファイバーは間伐材や倒木を原料としています。
◇セルロースファイバー
セルロースファイバーは、新聞紙などをリサイクルして綿状にした断熱材です。無機質系断熱材とは異なり、天然繊維が細かく絡み合っているため、空気層だけでなく繊維内部にも空気を含み、これにより熱や音の遮断効果が高まります。
さらに、湿気を吸収して放出する特性があり、適度な湿度を保つことで室内や壁内部の結露やカビを防ぐことができるのも利点です。また、セルロースファイバーには害虫駆除に使われるホウ酸が含まれているため、害虫被害の防止にも役立ちます。
ただし、施工方法が特殊で専門性が高いため、施工は専門業者に依頼する必要があり、材料自体のコストも高めです。
◇ウッドファイバー
間伐材や倒木などを有効活用して、木材を繊維状にして作られた断熱材は、木材の蓄熱性能や吸放湿性能を持っています。ウッドファイバーは多孔質材料であり、細かい穴に音を取り込んで内側で拡散することで音を吸収することができます。
この優れた吸音性能により、生活音や屋外からの騒音を効果的に軽減します。
また、蓄熱性も高いため、急激に出入りする熱をコントロールし、年間を通じて温度変化の少ない快適な室内環境を実現します。
愛知県で高断熱の注文住宅を建てるメリット
高断熱の住まいは、外気の侵入を防ぎ、部屋ごとの温度差が少なく、冷暖房効率に優れているため、電気代の節約が可能です。気密性も高めれば、遮音性向上、結露防止、効果的な換気などのメリットも得られます。
◇光熱費が安くなり省エネにつながる
高断熱の住まいは外気の侵入を防ぎ室内の空気を逃がさないため、冷暖房の効率が向上します。これにより、夏は涼しく冬は暖かさを保つことができ、冷暖房の使用頻度が減少して電気代の節約につながります。
また、リビングの室温に比べて廊下が極端に寒いといったこともなくなるため、急激な温度差によるヒートショックの防止にも効果的です。
◇機能面でもメリットが多い
断熱性と気密性を高めることで、住まいの機能性も向上します。主なメリットは以下の3つです。
まず、遮音性が向上します。高断熱・高気密の住まいは、壁に隙間がないため、外の騒音が聞こえにくく、室内の音も外に漏れづらくなります。小さなお子さんがいる家庭では、室内でのびのびと過ごせ、周辺への騒音防止にも役立ちます。
次に、結露が発生しにくくなることです。室内外の温度差が小さくなるため、結露が発生しにくくなります。結露が発生するとダニやカビが増え、住まいが劣化しますが、結露を防止することで家の寿命を延ばすことができます。
さらに、効果的に換気できることもメリットです。2003年に施行された改正建築基準法により、換気設備の設置が義務付けられました。高断熱・高気密の住まいは換気効率が良く、シックハウス症候群のリスクも低減されます。
日本のエネルギー消費の約3割を占める建築物分野において、2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、2030年までに温室効果ガスを2013年比で46%削減する目標が掲げられました。
これに伴い、2025年の建築基準法改正で省エネが義務化され、建築士は省エネ性能向上のための情報提供や適合性審査を行う責任を負います。また、住宅は断熱性能等級4以上を満たす必要があります。
断熱材には無機質系と木質繊維系があり、グラスウールやロックウール、セルロースファイバー、ウッドファイバーなどがあります。高断熱の住まいは冷暖房効率が良く、遮音性や結露防止、換気効率の向上といった機能性の向上が期待でき、省エネに貢献します。