夏の暑さが厳しい愛知県は、日本の中でも特に高温が続く地域として知られています。毎年、高温注意報が頻繁に発令され、住民や訪問者にとって過酷な気候条件が続きます。このような環境で快適に過ごすためには、家づくりにおいて涼しさを確保するための工夫が欠かせません。こちらでは、愛知県の厳しい夏を快適に乗り切るための涼しい家づくりのポイントや具体的な事例をご紹介します。
目次
愛知県は日本の中でも夏の暑さが厳しい地域
愛知県は、日本の中でも特に夏の暑さが厳しい地域として知られています。毎年、高温注意報が発令されることも多く、住民や訪問者にとっては過酷な気候条件が続きます。こうした暑さの原因には、フェーン現象や都市部の熱が関係しており、特に名古屋市周辺や東側の地域では気温がさらに上昇しやすい傾向があります。
◇名古屋より東部が暑くなりやすい
愛知県の夏は特に厳しい暑さで知られています。2023年の夏も、名古屋で最高気温38.2℃、愛知県豊田市では39.2℃を記録し、体温を上回る危険な暑さとなりました。こうした高温の原因の一つにフェーン現象があります。
フェーン現象とは、山を越えて吹く湿った気流が、吹き降りる際に乾燥し、高温の風になる現象です。愛知県では、三重県にある鈴鹿山脈を越えて吹き降りる風が、高温になるため、気温が上昇しやすくなります。
この風が都市部である名古屋市を通過することで、さらに温められた空気が東側のエリア(岡崎市、豊田市など)に流れ込み、これらの地域が特に暑くなりやすいのです。
夏場は外より室内が危険?室内熱中症のリスク
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夏場の室内はエアコンをつけたとしても暑さを感じる場合があるので注意が必要です。特に物件によって暑さがこもってしまう場合があるので、室内熱中症を防ぐためにも特徴を知っておきましょう。
◇室内が暑く感じるのはなぜ?
室内が暑く感じる大きな原因は、熱の逃げ道がないことです。家は窓や扉を締切にしていても、窓から差し込む日光などにより室内の空気が温められてしまいます。そして一度室内に入った熱は壁や屋根によって逃げ場を失い、熱がこもった状態となるのです。
さらにこれに加えて部屋の中の温度差が発生することで、より温度の不快感を感じやすくなります。部屋の暑さを感じてエアコンをつけても、冷たい空気は足元に滞留し上部は暑い空気のままであり感じる暑さは解消しましせん。その結果、足元ばかりが冷え込む状態に陥り不快感が続いてしまうこととなるのです。
◇熱がこもりやすい物件とは?
熱がこもりやすい物件の特徴として鉄筋コンクリート構造(RC造)であることがあげられます。RC造は気密性、断熱性が優れているため冬場の暖かく過ごしやすいというメリットもあり、構造としての強さもあることからマンションやアパートなどで積極的に採用されています。
しかしRC造は気密性や断熱性が高いからこそ夏場に熱の逃げ場を失い、室内では暑さを感じやすいといえるでしょう。また熱がこもりやすい物件の特徴として日光が多く差し込む部屋も注意が必要です。
特に夕方の西日の差し込む西向きの部屋や、屋根からの熱が伝わりやすい最上階の部屋、南向きで住戸と住戸に挟まれた部屋などは熱が溜まりやすく、日が沈んで気温が下がった夜にも暑さを感じやすいといえるでしょう。
◇熱中症の発生場所は室内が最も多い
熱中症は屋外や炎天下での運動などで起きるイメージですが、実は室内での発生が最も多いです。特に近年は地球温暖化による気温上昇が続いていることから、今後の家づくりにおいて特に暑さ対策は重要なポイントとなるでしょう。
夏でも涼しい家にするために配慮すべきこととは?
愛知県の厳しい暑さの中でも、快適に過ごすためのポイントを押さえておくことで住み心地の良い暮らしが可能となります。
◇高気密・高断熱の住まいにする
家を夏に涼しく保つための有効な方法の一つが、高気密・高断熱の住まいにすることです。高気密・高断熱の家は、断熱材の品質にこだわり、天井や屋根の裏側に施工することが重要です。また、高断熱サッシや高断熱ガラスを採用することも効果的です。
高断熱・高気密の家は、窓を閉めた状態で一度取り入れた涼しい空気や冷房の効いた空気を外に逃がさない性質があります。例えば、初夏の涼しい朝に窓を開けて外の空気を取り入れ、室内が涼しくなったらすべての窓を閉めます。
また、お昼過ぎからエアコンをオンにしても、高断熱・高気密の家は効率よく冷気を保つため、エアコンはゆったりと運転するだけで済みます。そのため、普通の家よりも電気代がかかりにくくなります。高気密・高断熱の住まいにすることで、快適な室温を保ちながらエネルギー効率も向上させることができます。
◇日射熱を遮る
日射熱は太陽の日差しや地表面からの照り返しの日光が室内に入り込むことで室内に伝わります。そのため日射熱を遮るには建物自体の庇や軒を出しておいたり、ルーバーブラインドなどの日射遮蔽部材や、熱線反射ガラスなど日射侵入率の低い窓を採用しておくことが重要です。また遮熱カーテンやブラインドといった後付けできるものでも暑さ対策となるでしょう。
◇熱気の排出ができる構造を工夫する
建物内の熱気を効率よく排出する構造を工夫することも大切です。その一つの方法として、エアパスソーラー工法があります。
エアパスソーラー工法では、壁の中に二重の通気層を設けたり、小屋裏や床下に換気口を設置したりして、建物全体に空気の通り道を作ります。これにより、夏場に壁内にたまる熱気が自然に排出され、室内の温度が上がるのを防ぎます。
具体的には、外から取り入れた涼しい空気が壁の中を通り、熱を吸収して上昇します。そして、小屋裏や床下の換気口から熱気が外に排出される仕組みです。この自然な通気の流れが、建物内の熱気を効果的に取り除き、室内を涼しく保つことができます。
夏でも涼しい家の建築事例を紹介
以下では愛知県の厳しい暑さの中でも快適な、涼しい家づくりの事例を3つご紹介します。
◇軒で日射を遮る住まい
2021年に竣工した注文住宅では縁側の軒の出を1.8mと少し長めにし、日射を遮蔽することで夏でも涼しい暮らしを実現しています。軒の出が長いことで夏の高い日差しは遮りながらも、冬の低い日差しは取り込むことが可能となります。
◇エアパス効果の高い住まい
平日は東京、週末は信州で過ごす二拠点生活を送っているオーナー様の家は、エアパス工法を取り入れたこだわりの住まいです。趣味のアウトドアギアがセンス良くディスプレイされたこの家では、土間から続く奥行きのあるウッドデッキにタープを張り、強い日差しを遮る工夫もされています。
エアパス工法は、壁の中に通気層を設け、小屋裏や床下の換気口から自然な通気を促すことで、室内の温度を調整する方法です。冬はほのかに暖かく、夏も外より5℃ほど低い温度を保っています。オーナー様も当初はその効果に半信半疑でしたが、平日には冷暖房を使用せずに締め切っているにも関わらず、この効果が得られることに驚いています。
◇木の香りに包まれ冬暖かく夏涼しい住まい
2022年5月に竣工した注文住宅では外張り断熱工法を取り入れることで屋外の気温に左右されない快適な住まいを実現しています。外張り断熱工法とは梁や柱といった主要構造部
をスタイロフォーム等の高性能断熱材で覆った工法です。
この工法によって木造ならではの木の温かみを感じながら、1年を通じて適温で住み心地の良い暮らしが可能となっています。
愛知県は、日本の中でも特に夏の暑さが厳しい地域です。この暑さの原因には、フェーン現象や都市部の熱が関係しています。特に名古屋市周辺や東側の地域では、気温がさらに上昇しやすい傾向があります。室内熱中症のリスクも高く、特に鉄筋コンクリート構造の建物や西向きの部屋、最上階の部屋などは注意が必要です。
快適な住まいを実現するためには、高気密・高断熱の住まいにすることが重要です。断熱材の品質や高断熱サッシ、高断熱ガラスを採用し、涼しい空気を閉じ込めることで、エアコンの効率も向上します。
また、日射熱を遮るために庇や軒、ルーバーブラインド、遮熱カーテンなどを活用することも効果的です。 エアパスソーラー工法を採用することで、壁内や小屋裏、床下に通気層を設け、熱気を効率よく排出することも重要です。これにより、建物内の温度上昇を防ぎ、快適な室温を保つことができます。