在宅ワークのストレスを軽減するためには、快適なテレワークスペースを設けることが重要です。自宅での作業環境が整っていないと、仕事とプライベートの区切りが曖昧になり、ストレスがたまりやすくなります。
また、同居人との関係やコミュニケーション不足もストレスの原因となります。注文住宅を建てる際には、効率的に仕事ができる専用スペースを設けることが大切です。ここでは、テレワークスペースの設計ポイントと具体的な事例を紹介し、快適な在宅ワーク環境の整え方を解説します。
目次
テレワークによる在宅ワークが増加している
近年、テレワークの普及により在宅ワークが急増しています。技術の進歩とインターネット環境の整備により、多くの企業がリモートワークを導入し、従業員は自宅で仕事をする機会が増えています。
◇2020年の感染症対策で急増
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年から急速にテレワークが普及しました。これまで導入に消極的だった企業も、感染リスクを軽減する手段としてテレワークを採用するようになりました。
その結果、2021年には51.9%の企業がテレワークを導入し、5.5%の企業が今後の導入を予定しています。この急速な変化は、企業の柔軟性とリモートワークへの適応力の高さを示しています。
◇減少傾向がみられるが継続の意向を持つ労働者も多い
2022年後半以降、コロナが落ち着きを見せるとともに、日本におけるテレワークの実施率は徐々に低下しています。しかし一方で、働く人々の間でテレワークを継続したいというニーズも高まっており、一定の定着を見せています。
総務省の調査によれば、在宅ワークを実施している人のうち、継続したいと考える割合は43.7%であり、「どちらかといえば継続したい」を含めると、合計で66.4%にも上ります。このような傾向は、テレワークが働き方の選択肢として定着し、労働者にとって魅力的な選択肢であることを示しています。
◇多様な働き方が定着する傾向
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、従来の働き方に加えて、在宅勤務やテレワークなどの多様な働き方が企業によって導入されるようになりました。企業は、自社の組織文化や業務内容、従業員のニーズに合わせて、柔軟な働き方を導入することで、生産性や従業員の働きやすさを向上させると共に、新たな価値を創造しています。このような背景から、多様な働き方が社会全体で定着し、働き方改革が一層進展しています。
在宅ワークはストレス?原因となる環境とは
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在宅ワークは多くの利点をもたらす一方で、ストレスの原因になることがあります。自宅での作業環境が整っていない場合や、仕事とプライベートの区切りが曖昧になることがその一因です。
◇仕事とプライベートの境界が無くなる
在宅ワークにおけるストレスの主な原因のひとつは、仕事とプライベートの切り替えが難しくなることです。明確な境界がなくなり、自宅での作業が当たり前になると、仕事とプライベートの区別が曖昧になります。
例えば、通勤時に着替えることで心理的な切り替えをする人もいますが、在宅勤務では私服での作業が一般的ですから、そのような簡単な手段が失われてしまいます。結果として、常に仕事の気分でいることや、プライベートな時間にも仕事の影響を受けることでストレスがたまりやすくなります。
◇コミュニケーション不足で孤独感を覚える
自宅での勤務では、対面でのコミュニケーションが減少し、チャットやメールなどの非対面のやり取りが主流となります。このため、他者とのリアルなコミュニケーションが不足し、孤独を感じる傾向があります。
実際、厚生労働省の調査でも、テレワーク環境下での対面コミュニケーション不足による不安や寂しさを訴える声が多く寄せられています。特に、人との交流がストレス解消や気持ちの安定につながる人にとっては、在宅勤務による孤独感は深刻な問題です。
◇同居人との関係性の悪化
在宅ワークによって同居人との関係性悪くなる場合もあります。例えば、夫婦の両方が在宅勤務をしている場合、一日のほとんどの時間を一緒に過ごすことになります。これにより、さまざまな摩擦が生まれ、ストレスに繋がります。
また、仕事をする環境が整っていないことで、生活音が仕事の妨げになることや、特に小さな子供がいる家庭では、在宅勤務中に育児も同時に行うため、育児疲れでストレスがたまりやすくなります。
注文住宅でテレワークスペースを用意するには?
注文住宅を建てる際には、仕事に集中できる快適な環境を計画的に整えることが可能です。テレワークスペースをどのようにデザインし、配置するかによって、日々の仕事の効率やストレスの軽減が大きく変わってきます。
◇テレワークに必要な広さと密閉性を確認
テレワークを行う際には、適切な作業スペースの確保が重要です。作業に必要な広さや仕事道具の収納スペースを事前に検討することが必要です。ただし、家庭内でのテレワークスペースは、家族や生活のための空間を優先する必要があります。
収納の方法も考慮し、造作か家具かを検討する必要があります。さらに、テレワーク中に家族の気配を遮断したい場合もあるため、空間の密閉性をどの程度確保するかも検討が必要です。これらの要素を考慮して、快適で効率的なテレワーク環境を整えることが重要です。
◇照明とコンセント・LAN配線への配慮で快適さを確保
テレワークを行う際には、適切な照明環境の整備も重要です。特に、VDT作業を行う場合は、モニターへの反射を避けるために注意が必要です。照明器具の選定では、光源が見えないものや、照度や色温度に配慮することが重要です。
色温度が高い光は集中力を高め、色温度が低い光はリラックス効果があります。また、アンビエント照明とタスク照明の両方を組み合わせることで、快適な作業環境を整えることができます。
また、テレワークスペースの設置にあたっては、コンセントやLANの配線も重要です。安定した通信環境を確保するために、有線LANの設置も検討しましょう。さらに、電子レンジやBluetooth機器などからの電波干渉にも注意が必要です。間取りを考慮する際には、Wi-Fiの通信範囲や電波の遮へい物にも注意しましょう。これらのポイントを抑えて、快適で効率的なテレワーク環境を整えることが重要です。
◇オンとオフを切り替えられて同居人から独立できる間取り
テレワークを成功させるためには、家の中で仕事とプライベートを切り替えられる環境が重要です。そのためには、仕事専用のスペースを設けることが役立ちます。個室や専用スペースを確保するほか、仕切りやパーティションを活用することも方法のひとつです。
また、家族やプライベートな時間との境界を明確にするために、テレワークスペースとリビングなどの共用スペースを離すことが重要です。さらに、仕事中の「オン状態」を維持するために、テレワークスペースの近くにトイレを配置するなどの工夫も効果的です。さまざまな方法を組み合わせて、快適で効率的なテレワーク環境を整えることが大切です。
在宅ワークを快適に行える注文住宅の事例
実際の注文住宅の事例を通じて、在宅ワークを快適に行える工夫や設計のポイントをご紹介します。
◇空きスペースをワークスペースとして活用
普段あまり使用していない、階段下や畳コーナーなどの小さなスペースでも、工夫次第でワークスペースとして活用できます。例えば、階段下の小さな空間にはカウンターを設置し、小窓からの自然光を取り込むことで、明るく快適な作業環境を確保できます。
また、畳コーナーを利用したテレワークスペースでは、ロールスクリーンやブラインドを活用して半個室空間を再現し、集中して仕事に取り組むことができます。さらに、ロールスクリーンを上げることで、リビングで遊ぶ子どもたちの様子を見守りながら仕事ができるため、柔軟な空間利用が可能です。
このように、空きスペースをワークスペースに転用することで、効率的な作業環境を構築し、快適なテレワーク環境を実現できます。
◇スキップフロアをワークスペースとして活用
スキップフロアもワークスペースに最適です。スキップフロアをワークスペースとして活用した例では、リビングに接したスキップフロアの階段の一部にカウンターを設置することで、家族の様子やお子様を見守りながら仕事に集中できます。さらに、壁がすぐ後ろにあるため、ビデオ会議の際に背景を気にする必要がないのも大きな利点です。
また、スキップフロアの下には納戸を設け、その横にカウンターを配置することで、省スペースを有効活用します。このスペースはノートPCでの作業やお子様の勉強スペースとして利用できます。さらに、コンセントも設置されているため、スマートフォンの充電など、日常の利便性も高められています。
◇共有スペースを有効活用
最後に共有スペースを有効活用した事例を紹介します。ある家庭の2階の共有スペースは、開放感あふれるホールであり、階段上部の吹き抜けと大きな窓から自然光が豊富に差し込みます。
壁に取り付けた有孔ボードは、絵や花などを飾るのに最適で、自分の好みに合わせて空間をカスタマイズできます。仕事中でもリラックスして取り組める雰囲気を醸し出し、web会議の際にはセンスをアピールすることも可能です。
テレワークの普及により、在宅ワークが急増しています。2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に多くの企業がテレワークを導入し、2021年には51.9%の企業がテレワークを実施するようになりました。現在は減少傾向にありますが、労働者の多くがテレワークの継続を希望しており、働き方の多様化が進んでいます。
しかし、在宅ワークにはストレス要因もあります。仕事とプライベートの区切りが曖昧になり、同居人との摩擦やコミュニケーション不足が主な原因です。このため、注文住宅を建てる際には、快適なテレワークスペースの設計が重要です。
適切な広さと密閉性、照明やコンセントの配置、仕事とプライベートを切り替えられる間取りなどを考慮する必要があります。 具体的な事例として、空きスペースやスキップフロアを活用したテレワークスペースの設計が紹介されました。
階段下や畳コーナー、スキップフロアを有効活用し、家族の様子を見守りながら仕事ができる環境を整えることが重要です。また、共有スペースを使って開放的な作業環境を作ることも一つの方法です。このように工夫することで、在宅ワークを快適に行える住まいを実現できます。